『影武者』(黒澤明)

戦国時代の家紋のデザインは世界に誇れる優れたマークデザインだと思っていた。しかし、あらためて「風林火山」を見て、これが最高。組織の哲学がダイレクトに4文字で表され、現代の、企業の行動規範、企業風土を言語化したものになっていて、そんなものは他にない。敵に向けてのメッセージとして強く機能したのは当然だが、インナーブランディングにもなっている。戦国時代で一番アバンギャルドだった。


これが、跡継ぎである勝頼には全然理解されていなかったのは悲劇としかいいようがない。本来の意図は、リーダーが代わっても哲学が浸透していれば、組織のアイデンティティも引き継がれて、競争優位性も簡単には失われないはずだったのだろう。しかし肝心の一番引き継がなければならないリーダーが何も引き継いでいなかったから、家督を継いだ瞬間にあれほど強かった武田家が哲学なき烏合の衆になり、あっというまに滅んでしまう。

苦労して作り上げても、滅ぶ時はあっという間。しかも滅ぼし方も美しい。