『太陽』(アレクサンドル・ソクーロフ)

ポツダム宣言受諾から人間宣言マッカーサーとの対面まで、昭和天皇の孤独と苦悩を描く、という意図のようだが、見て感じたのは複雑。戦犯としては見られないし、自分の遠いルーツとして思うと笑えないし、単純にかわいそうとも思えない。見ていて笑っていいのか笑ってはいけないのか、また笑ったら日本人である自分のことも笑うことになってしまわないか、など、いちいち戸惑う。


しかし全体としては、単純な外国人には滑稽に見ていたかもしれない天皇の姿も、彩度を落として、緊張感のあるBGM、ゆっくりした画面展開で、品位を保つことによって、喜劇役者とは全く違うのだという答えにはなっていたと思う。イッセイ尾形の演技も、ものまねとしてではなくリアリティとしてレベルの高い演技だった。思い起こすと初めて彼を見たのは、もう20年以上も前の新宿紀伊国屋ホール「都市生活カタログ」。そのころすでに得意技だった観察力と表現力をここまで昇華させてきたのは、凄いとしかいいようがない。「ヤンヤン 夏の想い出(台湾)」もよいし「トニー滝谷」も。彼には外れがない。