『ザ・ロイヤル・テネンバウムズ』(ウェス・アンダーソン)

天才の3兄弟と独裁的な父。そして家族を繋いでいた母。ひとりで凄いことができてしまう天才の子供たちも歳を重ね挫折を経験してだんだん普通の人(というより奇人)になり、離ればなれになってしまった家族の絆を取り戻していく。そんな話。予告編では、天才の奇人ぶりの描写がぶっ飛んでいたので、映画は珍妙で危険な話だと思っていたが、違って、普通に楽しめる映画だった。監督の演出は、ごてごての過剰感は感じることもなく、ちょうどよかった。

話がちょっと似ているなと、すぐ思い出したのは『ホテル・ニューハンプシャー』(ジョン・アーヴィング原作)。若かりしジョディ・フォスター、熊の着ぐるみに入ったナスターシャ・キンスキーがお気に入りだった映画だ。話は家族の再生の物語で確かに似ている。明らかに違うのは『ホテル・ニューハンプシャー』では人がどんどん死んでいってしまうのに対して、こちらは家族の繋がりは壊れるが、死にそうでも一歩手前で踏みとどまる。結局、古い家族の接着剤だった父ロイヤルだけが落とし前をつけて、他のみんなは再生して生き生きしていく。


あたりまえのことだが、あらためて思たのは、天才だって人だし、普通に悩み苦しみはあるし、浮き沈みだってあるよな、そこは同じだなということ。