『ベトナムから遠く離れて』

ベトナム戦争(1960〜1975)の最中に、「もはや沈黙は共謀を意味する」と考えたヌーヴェル・ヴァーグの監督たちが作ったドキュメンタリー・オムニバス映画。ベトナム解放戦線支持という立場でそれぞれが作った短編を編集して一つにしている。


フランス発であるからか、これまで目にすることのなかった映像がふんだんにでてくる。自分はこれまで、アメリカメディア視点、日本メディア視点、それも浅いものばかりみてきたのだなということを思い知らされました。自分にとっての新しい映像の群れで、濃密すぎてアタマん中、たいへんなことになっている。世界は複雑だ。もっと高い視座からいろいろ知識を吸収して消化しないといかん、と反省。


中で、カストロホー・チ・ミンおじさんの2人のインタビューが出てくるのだが、カリスマ性がすごい。これだけでも見る価値あった。また、チェ・ゲバラについては前にちょっと映画も見て知っていただけに、彼の言葉「第二第三のベトナムを作れ」をゴダールが独自解釈を展開して「自分自身の中にヴェトナムをつくれ」と言うあたりからは、ラテンアメリカ、アジア、アフリカ諸国の、世界の民族自決を目指す各国に与えた影響の大きさは分かっていたつもりだが、フランスの映画監督にまでも、、、。彼の言葉の影響の大きさとベトナム戦争の全世界に与えた影響の大きさを再確認した。テレビで同時中継された初めての戦争だったことも大きかったのだろう。


一方で、ドキュメンタリーとというより映画として振り返ると、ベトナムという同じテーマでありながら、それぞれの映画監督の作家性や着眼点の違いが、思いっきり見えて単純におもしろかった。さすがに、ヌーヴェル・ヴァーグニューウェーブの映画監督たち。アメリカ映画嫌いが、概ね共通している。中でもゴダールは、彼の作品はみな難解だと思うが、これに関してはドキュメンタリーだからか、彼の作品の中でも異質だろう。自分の主張や種明かしをしゃべっているところを撮影していて妙にわかりやすい。そこが、舞台裏を見ているみたいで面白い。